消失と縮小を有効といたしますと、ガマ腫・舌嚢胞・リンパ管腫では90%以上、耳血腫・正中頸嚢胞でも80%以上の有効率でした。
特に顎下型ガマ腫は、従来の治療法では舌下腺の摘出手術が必要で（嚢胞の摘出だけでは再発率が極めて高いことが報告されています）、1週間以上の入院治療が絶対に必要な病気でしたが、これが外来治療でほとんどが改善するのは特筆すべき結果と考えています。（こ
れまでは、顎下型ガマ腫の有効率はずっと100%でした。遠方から受診された患者さんで2回OK-432治療を行って改善しない患者さんが1例、4回OK
-432治療を行って、初回は1年弱ガマ腫が消失しましたが、その後再発を繰り返している患者さんが1例おり、不変例としております。これらの患者さん
は、当院への頻回の通院が可能で有れば、治療のタイミングなどをもっと細かに設定できたのでないかと思っております。）
ただし、すべての嚢胞性疾患に有効な訳ではなく、側頸嚢胞では3例のうち1例のみに有効、癌に随伴する大きな嚢胞には無効でした。
これは、OK-432は上皮を持たない嚢胞や1層の薄い上皮を持つ嚢胞を消失させる力はありますが、多層の厚い上皮を持つ嚢胞を消失させる力は無く、嚢胞
内容液の産生速度の極めて速い嚢胞にも効果が無いということを意味しています。逆の見方をすれば、OK-432嚢胞内注入療法は、その分安全な治療法であ
るということが言えます。
ま
たOK-432の特徴として、瘢痕を形成しないという点があります。例えば、アルコールなどの硬化剤は嚢胞を固める（硬化する）という点では、OK-
432より強力かもしれません。しかし、病変部が硬くなって治ったり（瘢痕化）、薬剤が嚢胞内から漏れると皮膚が壊死を起こしてかえって目立ってしまっ
たりする危険があります。故荻田先生はOK-432の利点として、「瘢痕を形成しないために美容的に優れる」ことを強調されておりましたが、私の経験例でも瘢痕を形成した例はありませんでした。この点におきまして、顔や頸部、手足などの見える部分の嚢胞の治療においてOK-432 は優れていると考えます。
