耳血腫(6)

成人男性の左耳血腫です。柔道の練習中に耳をぶつけたとのことで、最もよくある原因です。


初診時は内容液の吸引のみを行いました。約0.6mlの血性の漿液が吸引されて、吸引直後は腫れは無くなりました。
しかし、2日後にまた腫れてきたと再診されました。

 そこで、高濃度OK-432注入法で、OK-432 0.5KEを血腫内に注入いたしました。3日後に受診していただきましたが、嚢胞部が赤くなっており、腫れも強くなっています。OK-432注入の反応 (炎症)です。反応が強いので、腫れを少なくして痛みを減らす目的で、吸引のみを追加いたしました。内容液は粘稠になっており、細い針では少ししか吸引で きませんでした。塗抹して顕微鏡で見ますと、好中球を中心とした多数の炎症細胞や線維素が認められました。吸引した針孔から、中の液が少しづつ出ているのがお判りいただけると思いま す。
1週間後にも診察いたしました。少しぷくぷくした感じでしたので、再度吸引いたしました。今回は、前回よりは粘稠度の低い液が0,2mlほど引けました。 2週間後には、腫れはわずかに残っておりましたが、液体が溜まっている感じはありませんでしたので、経過観察といたしました。4週間後の受診時には腫れは 完全に消失しておりました。

耳血腫は、耳介軟骨と耳介皮膚の間の血管が切れて血液が溜まったものと考えられます。OK-432の炎症で内容が粘稠になり、出血が止まると考 えます。ただ、ここには軟骨と皮膚しか組織はありませんので、溜まった液体はなかなか吸収されませんので、本例の様に内容液の吸引を追加する必要があった りすることは珍しくありません。

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