正中頸嚢胞は、発生（受精卵がさまざまな分裂を繰り返して個体を作り上げること）の過程で消失するはずの甲状舌管という組織の一部が残って嚢胞を形成したもので、甲状舌管嚢胞と も呼ばれます。嚢胞性疾患の中では、最も多い病気になります。受精卵は分裂を繰り返すうちに一時魚のような形になって、その後人間の赤ちゃんの形になって いきます。その時の鰓（えら）の部分が消えずに残ったものとされています。子供から大人まで幅広い年齢層に発症します。本来は先天性のもののはずですが、 それが何故大人になってから腫れてくることがあるか？などは、実は良く判っていないと思います。一般に治療として、舌骨の一部を含めた摘出手術が行われま す。
上の例は成人女性の正中頸嚢胞の症例です。最初手術を予定していましたが、術前検査で問題が見つかり、本治療に変更しました。内容液 を吸引し、代わりにOK-432(0.5KE)を注入いたしました。左は治療前の写真で、頸の前方の腫脹が認められ、ＣＴでもその部に一致して嚢胞が認め られます。右は治療1ヶ月目の写真です。頸部の腫脹は消失し、ＣＴでも嚢胞は完全に消失しています。
下の例は成人男性症例です。左は治療前の写真で、右は治療1ヶ月目の写真です。手術を希望せず、最初OK-432,0.5KEの注入 を行いましたが効果不十分で、2週間後に1.0KEの再投与を行いました。1ヶ月後には、嚢胞はほとんどわからなくなりました。ＣＴを良く見ますと、非常 に小さな嚢胞は残存しておりますが、その後の増大はありません。
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